考える力を養うために/言葉へのこだわり
推薦図書
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日本語をもっとよく知る
文章表現 ― なにをどう書けばよいか?
レポート・論文の書き方 ― 日本語でしっかりした文章を書くために(参考図書・推薦図書)
レポート・論文の書き方(実際に書くためのアドバイス)
ものの見方、考え方の訓練のために
- 苅谷剛彦『知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ』講談社(+α文庫)2002年、924円
レポート/小論文の書き方をいくら勉強しても、実際には良いものは書けない。ものの見方・考え方も訓練する必要がある。第一に推薦するのはこの本。 常識的なものの見方、先入観にとらわれているうちは、しっかりしたレポートや論文は書けない。しかし、さまざまな角度からものを見たり、考えたりすることができるようになるためには、知的訓練が必要である。この本を読んで「複眼」的にものを見る眼を養おう。
- 坂本尚志『バカロレア幸福論 ― フランスの高校生に学ぶ哲学的思考のレッスン』(星海社新書、2018年)994円
フランス式論文作法を紹介した本。日本の教育に最も欠けているのは哲学的思考の訓練である。それは「考える技術」の欠如でもある。この本にはその「考える技術」とはどういうものか、どうやって学ぶことができるのかが具体的に示されている。それは「型」を学ぶことだ。学生諸君にぜひ読んでほしい本である。書評もどうぞ。
考えるということ ― 哲学とは何だろう?
- 斎藤哲也『試験に出る哲学―「センター試験」で西洋思想に入門する』NHK出版新書、2018年、860円+税
センター試験の問題を切り口にした、西洋哲学史の入門書。古代から20世紀に至るまで、哲学者たちが何を問題として取り上げてきたかが俯瞰できるし、思想の流れが簡潔・明快に解説されている。哲学なんて難しいなどと言わずに、ぜひ一度読んでみるとよい。書評もどうぞ。
- 荻野弘之『哲学の原風景―古代ギリシアの知恵とことば』NHKライブラリー、1999年、896円
内容紹介(「BOOK」データベースより)
「私自身を知りたい」紀元前五世紀のヘラクレイトスの言葉は極めて今日的である。タレス、ピタゴラス、パルメニデス、プロタゴラス…、ソクラテス以前の思想家たちは様々に「世界」や「人間」を探究していたが、そこには今日へと繋がる共通の思考態度=論理の誕生があった。彼らの残した言葉を読むことにより「哲学の始まり」の時期に立会い、「哲学とは何か」をその原風景から問いなおす書。
- 荻野弘之『哲学の饗宴―ソクラテス・プラトン・アリストテレス』NHKライブラリー、2003年、994円
内容紹介(「BOOK」データベースより)
古代ギリシアの三大哲学者、ソクラテス・プラトン・アリストテレス。アテナイを舞台に活躍した、この三人の哲人によって、西洋哲学の基礎は築かれた。哲学とは、なにを、どのような仕方で問う学問だったのか。彼らが遺した言葉に思索の「原型」を探り、またそれを通して、人間を取り巻く諸問題を解明していく。
- 山本芳久『世界は善に満ちている トマス・アクィナス哲学講義』新潮選書、2021年。
トマス・アクィナス? 哲学講義? なんだか難しそう…… それに、世界は善に満ちているなんて、ほんとうかしら? この世界には悪いことがいっぱいあるのに……
確かに、常識的にはそう考えるのが普通かも知れません。ですが、哲学というのはそもそも知恵の探究、たとえばこの世界のありよう、人間のあり方、生き方などを明らかにしようとするもので、常識レベルに安住するものでは決してありません。
では、なぜ世界は善に満ちていると言えるのでしょう? トマスの哲学が示すその答えにたどり着くまでのプロセスを、著者はトマスの感情論を手掛かりにしながら、「哲学者」と「学生」との対話という形でたどっていきます。
ところで、感情というと、何かとりとめのない心の動き、捉えどころのないもののように思えるかも知れません。しかし著者は、トマスの感情論の特徴は「感情には明確な論理がある」とするところにあるとし、その構造と論理を説明していきます。たとえば「希望」の対象の第一条件は「善」であること、第二条件は未来のものであること、第三条件は獲得困難なものであること、などと。
もしかして、頭が痛くなってきたでしょうか? 使われている言葉も、最初は難しそうでとっつきにくく感じられます。しかし、よくわからないので説明してくださいと求める「学生」に答えて、「哲学者」は一つずつ問題を解き明かしていきます――「愛」の成立構造ついて、「愛」を心に「刻印」する「善」について、わかりやすく。そして、「悲しみ」や「恐れ」のような否定的な感情も含め、すべての感情の根底には「愛」があり、さらにその「愛」の出発点には「善」があることを。そうやって最後まで読み通したとき、確かにこの世界は善に満ちていると気づかされることでしょう。
- 西村義樹・野矢茂樹『言語学の教室 ― 哲学者と学ぶ認知言語学』中公新書、2013年、882円 書評
- 野矢茂樹『哲学な日々 ― 考えさせない時代に抗して』講談社、2015年、1458円 書評
論理的思考法の訓練のために
- 野矢茂樹『入門! 論理学』中公新書、2014年、799円
内容紹介(「BOOK」データベースより)
論理の本質に迫る、論理学という大河の最初の一滴を探る冒険の旅!あくまでも日常のことばを素材にして、ユーモアあふれる軽快な文章で説き明かされていく。楽しみ、笑いながらも、著者とともに考えていく知的興奮。やがて、「考え、話し、書く」という実際の生活に生きている論理の仕組みが見えてくる。論理学って、なんだかむずかしそう、と思っているあなにこそ、ぜひ読んでほしい「目からうろこ」の入門書。
- 飯久保廣嗣『質問力 — 論理的に「考える」ためのトレーニング — 』(日経ビジネス人文庫、2006年、680円)
内容紹介(amazon)
「できる? できない?」「それは何?」。よく耳にする質問は事態を混乱させるばかり。論理思考による優れた質問が、問題解決にどう役立つか、身近な事例で詳しく解説したヒット作に、論理力テストを加えて文庫化。
言葉/日本語/つたえること/コミュニケーションへのこだわり
井上ひさし と 平田オリザ の二人の本を紹介しよう。
文章のセンスを養うために
文章のセンスを養うには「よい文章」を数多く読むしかないが、レトリックについて学んでおくと言葉に対する認識がもう少し深まるはず。
- 佐藤信夫『レトリック感覚』講談社学術文庫、1992年、1,100円+税
言葉では到底表現できないような「思い」「イメージ」「体験」を、それでもなお表現しようとしたら、一体どんな言葉でもって表現するのか? 芥川、太宰、川端など、日本人なら誰でも知っている作家達の文章を例にあげながら、レトリックについて解説しつつ、あわせて人間と言語についても論じている。ことばに対する認識が深まる本である。
- 佐藤信夫『レトリック認識』講談社学術文庫、1992年、1,000円+税
上の本の姉妹編。これも続けて読むとよい。
生命とは何だろう?
- 福岡伸一『生物と無生物のあいだ』講談社現代新書、2007年、799円
内容紹介(amazon)
生命とは、実は流れゆく分子の淀みにすぎない!?
「生命とは何か」という生命科学最大の問いに、いま分子生物学はどう答えるのか。歴史の闇に沈んだ天才科学者たちの思考を紹介しながら、現在形の生命観を探る。ページをめくる手が止まらない極上の科学ミステリー。分子生物学がたどりついた地平を平易に明かし、目に映る景色がガラリと変える!
動物の世界の不思議な仕組み
- 長谷川英祐『働かないアリに意義がある』メディアファクトリー新書、2010年、799円
内容紹介(「BOOK」データベースより)
7割は休んでいて、1割は一生働かない。巣から追い出されるハチ、敵前逃亡する兵隊アリなど「ダメな虫」がもたらす意外な効果。身につまされる最新生物学。
政治・経済・社会のあり方
- 宇野重規『未来をはじめる――「人と一緒にいること」の政治学』東京大学出版会、2018年、1600円+税
「政治とは何か。それは結局のところ人と一緒にいるということなのです」(126ページ)と著者は言っています。
人は一人だけで生きているわけではありません。社会は、この世界は、一人ひとり違う大勢の人たちから成り立っています。そして、それぞれ違う考えをもつ人たちの関係を、どうやって調整していくか――それが政治の出発点であり、ゴールでもあるでしょう。
政治の話というとなんだか難しそうですが――いや、実際に難しいといえば難しいのですが――、著者は政治とはどういうものなのかを、女子中高生を相手に「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく」(松澤隆氏、WEBRONZAでの書評)語っています。ぜひ読んでみるといいでしょう。
- 佐伯啓思『反・民主主義論』新潮新書、2016年、740円+税
出版社Webサイトでの紹介
「われわれはそろそろ自由や民主主義の就縛から解き放たれなければどうにもならないでしょう。いや、自由や民主主義そのものが悪いとか無意味だといっているのではなく、それを絶対的な正義とみなすという自己就縛からさめるべきだ、といっているのです。」(本書196ページより引用)
自由や平等を絶対視すると暴走する危険が… 民主主義とは何かをか考えるために。
- 木村草太(著)、石黒正数(イラスト)『キヨミズ准教授の法学入門』星海社新書、2012年、840円+税
内容紹介(「BOOK」データベースより)
山の上の高校に通う2年生の僕は、放課後に寄り道した喫茶店「赤ひげ小人」で、近所にある港湾大学のキヨミズ准教授と出会う。大学で「受講生0人の法学入門」を受け持つ少しヘンなその先生は、お願いもしてないのに、法的思考のすばらしさを高校生相手に嬉々として語り出して―。「高度な内容を分かりやすく」を信条に首都大学東京で教鞭をとる若手憲法学者が、進路に迷う高校生や法学に拒絶反応を示す文学部生にも分かるように、物語の手法を用いて生き生きと、そして最高に面白く語る「日本一敷居の低い法学入門」。
野中幸宏氏によるブックレビューもどうぞ。
- 根井雅弘『経済学はこう考える』ちくまプリマー新書、2009年、680円+税
内容紹介(「BOOK」データベースより)
私たちはなぜ、何のために経済学を学ぶのだろうか?「冷静な頭脳と温かい心」「豊富の中の貧困」など、経済学者たちはこれまで、考えを尽くし、さまざまな名言を残してきた。彼らの苦悩のあとを辿り、経済学の魅力を伝授する。
著者からのメッセージ「経済学者たちが残した名言」もどうぞ。
- 神野直彦『「人間国家」への改革 参加保障型の福祉社会をつくる』NHKブックス、2015年、1404円 書評
- 平田オリザ『下り坂をそろそろと下る』講談社現代新書、2016年、760円+税 講談社サイトでの内容紹介
平田オリザ×藤田孝典:この国は、もう子どもを育てる気がないのか 日本は「想像力が欠落した国」になっていた もどうぞ
歴史へのアプローチ
- 加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』新潮文庫、880円
栄光学園(神奈川県にあるキリスト教系の学校)の中高校生と一緒に日本近代の「戦争」を考えた5日間の講義録。出版社のサイトの内容紹介にはこうあります。
膨大な犠牲と反省を重ねながら、明治以来、四つの対外戦争を戦った日本。指導者、軍人、官僚、そして一般市民はそ れぞれに国家の未来を思い、なお参戦やむなしの判断を下した。その論理を支えたものは何だったのか。鋭い質疑応答と縦横無尽に繰り出す史料が行き交う中高生への5日間の集中講義を通して、過去の戦争を現実の緊張感のなかで生き、考える日本近現代史。小林秀雄賞受賞。
同じページの佐藤優による書評「未来を生きる力を授ける見事な近現代史講義」、またこの本について著者加藤陽子へのインタビュー歴史の言葉に耳を澄ませるもあわせてどうぞ。
信仰と理性、信仰と科学
- 岩島忠彦「信仰と理性」
信仰と理性は敵対するものではなく、別次元に属するものです。では両者はどういう関係にあるのでしょうか。イエズス会司祭・岩島忠彦師の論考は次のように始まります。
「信仰の信憑性は信じることからのみ生じる。不信仰の非信憑性は理性によって必ず立証できる」。筆者が神学生だったときの基礎神学教授P・クナウアーの命題である。信仰を理性的に立証することはできない。しかし信仰に反する命題は必ずどこかに論理の不整合ないし短絡があるので、それはすべて理性で指摘できるという意味である。理性は信仰に対してフィルターのような役割を果たす。すべての信仰に関わらない事がらは理性のフィルターの所で処理されるが、信仰はそのフィルターに引っかからず理性をすり抜ける。
このあと、しばらく歴史的な考察が続きます。哲学や神学になじみのない人には少し難しいかも知れません。その場合は途中をとばし、終わり近くの「現代という時代」から最後の「一つの提案――世界観、人間観、人生観、歴史観」をどうぞ。
なお、わたし自身の考えについてはこちらをどうぞ。
- 三田一郎『科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで』講談社ブルーバックス、2018年、1000円+税
神を信じることは思考停止ではありませんし、科学と神は矛盾するものではありません。
この本の内容については講談社サイトでの紹介をどうぞ。
仲野徹氏の「一流の科学者が「神の存在」を信じるワケ 最先端を突き詰めた先に見たものとは?」も合わせてどうぞ。
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