目 次
翻訳者は裏切り者?
人生に意味を
夫婦の絆を生きて
長崎新聞「うず潮」での連載―はじめに
考える葦
クレオパトラの鼻
何かわからぬもの
二つの無限
この無限の空間の・・・
永遠の沈黙
パスカルの賭け
信仰と理性
イエスの秘義
天使と野獣
幸福の追求
真の幸福とは―未発表番外編
フランス文学と愛
フランス古典劇への招待
古典的伝統と創造
ラシーヌと古典的節度
イポリットの恋
愛すべき天地
ユーロの手ざわり
ユーロ:コインの裏側
古典に親しむ
外国語を学ぶとは
あらためて―考える葦
「不実な美女」
トアル教授の5分講義―はじめに
第1回:コトバの重み―外国語を学ぶということ
第2回:コトバの重み―翻訳をする人へのアドバイス(1)翻訳者は裏切り者?
第3回:コトバの重み―翻訳をする人へのアドバイス(2)8つのポイント
第4回:コトバの重み―創意を持つには 古典を読む理由
第5回:トアル先生との対談(1)
第6回:トアル先生との対談(2)
第7回:トアル先生との対談(3)
第8回:企画を終えて
番外編(1)トアル先生の演劇論
番外編(2)グローバル化について
教皇フランシスコのダイナミズム
あとがき
あとがき
わたしが最初に書いたエッセイらしき文章は、この電子書籍でも最初にあげている「翻訳者は裏切り者?」です。数えてみると、いまからちょうど30年前のことでした。
なぜこのテーマを選んだかといえば、どうやら自分も翻訳者のはしくれになったかなと思い始めたころだったからです。その3年前に初めての翻訳書が、そして2カ月前には2冊目の翻訳書が出版されたばかりで、フランス語教師、フランス文学・演劇研究者という肩書きに、もうひとつ翻訳者という肩書きが加わったような気分に浸ってもいたところでした。とはいえ、わたしがその後ふたたび翻訳に取り組むまでには、ほぼ4分の1世紀の時間が経過することになるとは、当時は思いも寄りませんでしたが。
いま読み返してみると、少しばかり肩に力が入っているように感じます。しかし、基本的な考え方は変わっていません。それで、これを全体の題名に選ぶことにしました。
ただ、気になることがあります。
未発表ですが、つい最近訳した同じ著者の2冊の本について言うなら、著者が語る声と自分の声とがどうも入り交じっているような気がしています。翻訳者としてのわたしが「自己の存在を消し去る」ことができるようになったのか、あるいは著者がわたしに憑依したのか、はたまた訳者が著者に成り代わって語り始めたのか・・・。そのあたりのことは、もうしばらく様子を見てみないとなんとも言えません。可能性を切り拓く努力はまだまだ続く、ということでしょうね。(2021年3月20日)
付記
私家版として、昨年、試みに電子書籍をつくり、ホームページにも公開していましたが、このたび戸口書店から電子書籍版と合わせてPDF版を正式に出版することにいたしました。もとになったテキストはすべてホームページに掲載してありますので、よろしければそちらもどうぞ。(2022年9月29日)