ジャック・フィリップ『司祭の霊的父性 土の中の宝』
戸口民也訳
内容紹介、「目次」、「はじめに」
内容紹介
今日の社会が直面している父性の危機において、男性、特に司祭は、神の強く優しい父性を映し出す存在となることが、これまで以上に必要とされています。
真の父性とは何か? どのようにすれば、父という立場にある者は、自分に託された人が真に自分自身となり、神の子としての自由を獲得するのを助けることができるのか? ジャック・フィリップは、これらの問いに答えつつ、司祭が叙階によって受けた賜物を開花させるためにたどるべき霊的な道を示そうとしています。
本書は、司祭だけでなく、教会や社会において父としての務めを果たすように招かれている人たち(一家の父親、教育者、指導的立場にある人など)にとっても役立つでしょう。また、女性たち、とくに母親にとっても、子育ての問題だけでなく、今の社会が、そして男性たちが抱えている問題を、女性の視点から捉える機会となるに違いありません。
目 次
はじめに
I. 父性 ― 必要不可欠だが難しいもの
- 父性という言葉について
- 司祭職のための聖霊降臨
- 父性、いまとくに求められているもの
- 父の不在による苦しみ
- 継承の問題
- 父がいなければあわれみもない
- 父がいなければ自由は重すぎる負担となる
- 父がいなければ兄弟愛もありえない
- 父性という賜物
- 父の祝福
- 真の父性とは何か
- 機能不全状態にある父性
- 子の側からくる問題
- 聖書における父性
II. どうすれば父になれる?
- 父になるには子でなければならない
- 教会の子であり夫であること
- 兄弟であること
- 心の貧しい人として真福八端の精神を生きる
- 自分優先から他者への配慮へ
- 自分を捨てて他者を受け入れる
- 自分の限界を認め信仰の泉から汲む
- 信仰の霊
- 霊的な貧しさと謙遜
- 泣く人々は幸いである、その人たちは慰められる
- 柔和な人々は幸いである、その人たちは地を受け継ぐ
- 義に飢え渇く人々は幸いである、その人たちは満たされる
- あわれみ深い人々は幸いである、その人たちはあわれみを受ける
- 心の清い人々は幸いである、その人たちは神を見る
- 平和をもたらす人々は幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる
- 義のために迫害される人々は幸いである、天の国はその人たちのものである
- 教会、マリアと女性の神秘
- 位階的祭司職と信者の共通祭司職
III. 司祭の任務における父性
- 民のための執り成し
- 聖体祭儀と秘跡の執行
- 聖体礼拝
- 信者との個人的な話
- 赦しの秘跡
- 説教
- 共同体の統治
- 貧しい者、小さい者を守る
結びとして
著者紹介
はじめに
司祭の霊的父性というテーマはいまや重要な問題となっています。けれども、扱いが難しい問題でもあります。とくに、ある司祭たちの、真の父性とはまったく相容れない、痛ましい行為が暴露されたためです。
けれども、今わたしたちが生きている世界においてとりわけ求められているのが、神の父性を正しく映し出しているような人たちです。わたしにはそれが、司祭だけのものではないにしても、司祭の召命には不可欠な要素であると思えるのです。
司祭自身にとって、その任務を行う中で真の父性を自分のものとして経験することは、大きな恵みです。そのことで、司祭職のもつ美しさや深さを強く実感できるからです。
この小著を通じて、わたしの兄弟である司祭たちを励ますことができるよう願っています。彼らはそれを大いに必要としていますから、その召命の豊かさ美しさを信じられるよう助けたいと思っています。司祭の召命はとても難しく骨の折れるものですが、父性 ― 父であるということ ― は大きな喜びの源泉でもあるのです。命を伝えることほど美しいことはありません。とくにその命が永遠の命、神の命そのものであるとしたら。
わたしのこの本は、とくに司祭たちを対象としてはいますが、父としての務めを果たすように招かれている人たち(一家の父親、霊的な父、教育者、指導的立場にある人など)にとっても、自分の責務を正しく果たすために役立つようなヒントが得られるでしょう。