ジャック・フィリップ『信頼と愛の道 リジューのテレーズと共に』

内容紹介(「目次」と「はじめに」)


目 次

はじめに
第1章 まったく新しい道
第2章 小さい者のためのエレベーター
第3章 自分の弱さと和解する
第4章 信頼のうちに成長する
第5章 神の限りないいつくしみ
第6章 試練を生きる
著者紹介


   わたしの道はまったく信頼と愛の道です。
    ― リジューのテレーズ、ルーラン神父への手紙

はじめに

 この本は、2010年10月の最初の週末、リジューの聖テレーズの祝日[10月1日]のすぐあとに、マドリードに近いある小教区の黙想会で行った説教をもとにしています。

 その席でわたしは、24歳で亡くなったこの若き修道女、教皇ヨハネ・パウロ2世が1997年に教会博士として宣言した聖テレーズが伝えたメッセージの核心を示したいと思いました。リジューのカルメル会修道院でテレーズが発見し、生き、そして指導を委ねられた修練女たちに教えた、あの「まったく新しい小さい道」あるいは「信頼と愛の道」 とはどんなことから成り立っているのかを説明することです。彼女は予感していました、この小さなサークルを越えて、神もまたこの道を、大勢の「小さい霊魂たち」、弱くて無力な人々に啓示することで、彼らを愛の最高の極地にまで導くことを望んでおられるということを 。

 死の直前にテレーズは、自分が死んだ後、大きな務めが待っていることを予感しました。

 わたしはもうじき安息に入ると感じています・・・。でも、わたしの使命がもうじき始まることをとりわけ感じています、わたしが神様を愛しているように神を愛するようにさせるという使命、わたしの小さい道を人々に示すという使命が。神様がわたしの願いをかなえてくださるなら、わたしの天の国は世の終わりまで地上に届くことでしょう。そうです、わたしの天の国を届けて地上に善をなしたいのです・・・ 。

 テレーズの教えの驚くほどの広がりは今日も続いていますが、このことは、若きカルメル会修道女の願いが幻想ではなく、父なる神の知恵によるものだったということを明らかにしています。父なる神は「知恵ある者や賢い者には隠して、幼子のような者にお示しに」(ルカ10・21)なる方、こうしたことでも、また他の様々なことでも、「期待を越える」 ことをしてくださる方だからです。

 わたしは、マドリードでのあの週末に行った6回の説教が出版の対象になるとは思っていませんでしたが、そのときの話を出版してほしいと頼まれました。徹底的に編集し直すことができず、録音データをもとに起こした文章に多少なりとも手を入れながら、いくつかの点を明確化したり、あるいは役に立ちそうなテキストの引用を加えたりするにとどめました。

 できばえはたぶん完全とは言えないでしょう、文章も出版物でふつう使われるような文体というよりは口頭表現のスタイルを残していて、無駄な繰り返しや脱線も見られます。しかし、たとえそうではあっても、ある人たちにとってこの本は、とくにリジューの聖テレーズのメッセージをより深く理解するための助けになるでしょう。彼女のメッセージは今日の教会と社会にとってきわめて重要な意味をもっている、とわたしは考えているからです。

 今日のようなもろく傷ついた世界において、けれども聖霊が、すべてのキリスト者に対して、聖性を求めなさい、福音を徹底的に生きなさいと強く呼びかけているこの世界において、テレーズがわたしたちに示したこの信頼と愛の道よりもすぐれた道はないと思うのです。  この本の最良の使い方は、たぶん当初の趣旨に即した使い方、つまり黙想のためのガイドとすることでしょう。たとえば1週間をそれにあて、毎日1章を読み、黙想の時間をとりながら、祈りのうちに引用されたテキストを読み直し、それがわたしたちの実生活をどう照らしてくれるのか、主はそのテキスト通じてわたしたちにどのような招きを届けてくださっているのか、思いめぐらしてみることです。