「キリスト者として信仰生活を深めようとすれば、心の平和を得て、それを保つよう努力することです。」(本文より)「心の平和を保ちつつ霊的に進んでいくことができる道に、この本を通じて進んでいってください。」(大阪大司教区 酒井俊弘補佐司教「紹介のことば」より)
心の平和を得て、それを保つよう努力することは、信仰生活だけでなく、仕事や家庭生活においても大切なことです。著者は、わたしたちがしばしば直面するさまざまな状況を取り上げながら、問題にどう対処すればよいか、不安や恐れ、悩みや心配事にどう向き合えばよいかを、具体的に示してくれます。本書はフランスのカトリック司祭が信者を対象として書いた本ですが、キリスト者でない方々にとっても、有益かつ実践的なアドバイスが得られるに違いありません。
キリストの平和があなたがたの心を支配するようにしなさい。(コロサイ3・15)
経験があなたたちに示してくれるでしょう、平和 ― あなたたちの霊魂に愛徳を、神と隣人への愛を注いでくれる平和は ― 永遠の命へとまっすぐに向かう道であるということを。(フアン・デ・ボニーリャ、16世紀)
現代は落ち着きがない、不安な時代です。こうした傾向は、現代人の日々の生活にはっきりと見てとれることですが、キリスト者の霊的生活においても見られることです。わたしたちが神を求め、聖性を追求し、隣人への奉仕に努めようとするときも、しばしば不安やあせりに見舞われたりします。福音が示す幼子のようになるなら、平和で信頼に満ちた態度でいられるはずなのですが。
けれどもわたしたちは、いつかは理解すべきなのです、神へと向かう道、わたしたちが完全なものとなるために歩む道は、どんな状況においても心に平和を保つことを少しずつ学んでいくなら、もっとはやく、効果的に、楽に進めるようになるのだと。そのときわたしたちは聖霊に素直に従うようになり、主がその恵みによって、自分の力ではとてもできないようなことを、わたしたちにさせてくださるのです。
これが、わたしが第1部で考えてみたいと思っていることです。そのあと第2部で、わたしたちがしばしば直面するさまざまな状況を取り上げながら、どのように対処すれば心の平和を保つことができるかを、福音の照らしを求めつつ、説明していきたいと思います。
教会の伝統において、この問題は霊性の巨匠たちがしばしば取り組んできたものです。第3部では、これから取り上げるなるさまざまなテーマに関連するテキストを、いくつもの時代の霊的著作から抜粋して紹介することにします。