カトリックの伝統の中には、多少とも時間をかけて神の御前にとどまり、神との親しい交わりに入ろうとする「念祷」と呼ばれる祈りがあります。念祷をする、言い換えれば、このような祈りを規則正しく実行することは、神を知り、愛し、真のキリスト者の生活を送るためになくてはならない手段です。多くの霊性の大家たちもそのことを認めています。
今日、多くの人は神に渇き、深い祈りの生活を求めて「念祷」をしたいと望んでいます。喜ぶべきことです。しかしこのような人々も、この道を本気で歩み始め、さらに忍耐強く続けようとすると色々な障害に出会います。時には念祷を決意するのに必要な励ましがなかったり、どうすればよいのかわからず途方に暮れたり、あるいはまた、何回か実行してみた後で困難にぶつかって落胆し、念祷を続けることを止めたりします。非常に残念なことです。なぜなら、念祷を根気強く続ければ「神が御自分を愛する者たちに準備された、目が見もせず、耳が聞きもせず、人の心に思い浮かびもしなかったこと」(1コリント2・9)を知ることになるからです。
ですから、この小さな本では、念祷をしたいという願いをもつすべての人を助けるために、できるだけ単純に、そして具体的にいくつかの助言と方向性を示すことにしました。この人々が念祷の道を歩み始め、その道をたどる途中で出会う、避けがたい困難に打ち負かされることなく、忍耐強くそこに踏みとどまるようにとの願いからです。
念祷を扱った本は数多くありますし、偉大な観想家といわれる人々が念祷について語ることは、わたしたちよりはるかに優れています。しかし、念祷に関する教会の教えはもっと単純で近づきやすく、しかも現代人の感受性と言葉遣いを考慮して示される必要があると思われます。さらに、神がそれぞれの時代の人々を導かれる教育法も重要です。この教育法は必ずしも過去のものとは同じではありません。この小さな本を書いたのはこのような思いからです。